福岡地方裁判所 昭和30年(わ)474号 判決 1967年3月24日
本店の所在地
東京都中央区銀座東四丁目一番地
被告会社
振興鉱業開発株式会社
右代表者代表取締役
菅谷恒進
本籍
東京都板橋区大谷口町二ノ六四番地
住居
東京都中野区鷺ノ宮五丁目一九〇番地ノ四
田丸産業株式会社社長
田中隆博
大正一一年三月七日生
右被告人両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官青野真治出席の上審理を逐げ、次の通り判決する。
主文
被告会社を罰金五〇〇万〇〇〇〇円に、被告人田中隆博を懲役六月及び罰金五〇〇万〇〇〇〇円に各処する。
但し被告人田中隆博に対し本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
被告人田中隆博において右罰金を完納することができないときは金一万〇〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告会社と被告人田中隆博の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人振興鉱業開発株式会社(以下被告会社と略称する)は、昭和二一年頃から被告人田中隆博の父彰治が日鉄二瀬鉱業所の斥先堀として石炭採堀販売を営んでいた振興炭坑を、昭和二三年三月二九日会社組織に改め、資本金五〇〇万〇〇円を以て(1)石炭の採堀(2)石灰石の採堀(3)鉱物の採堀及び販売(4)右各項に附帯する一切の業務を目的として設立され、本店を当初東京都千代田区神田鍜治町一丁目一番地に、同二四年四月一〇日以降同中央区木挽町四丁目一番地に、同二九年五月二五日以降同千代田区平河町二丁目一一番地に、而して同三〇年八月五日以降現在まで同中央区銀座東四丁目一番地に有し、福岡県嘉穂郡穂波村大字弁分に振興鉱業所、同県田川郡勾金村中津原に丸吉鉱業所の二事務所を有し、石炭の採堀鉱物の採堀並びに販売の事業を営んでいた会社で、納税地を同県嘉穂郡穂波村大字弁分に指定されていたもの、被告人田中隆博は右被告会社設立と同時に取締役となり、昭和二四年四月一〇日以降同二七年一〇月二八日まで及び同二九年春以降同三四年二月一〇まで右被告会社代表取締役として同会社の経営、経理事務全般を総括主宰していたものであるが、被告人田中隆博は被告会社の法人税を逋脱しようと企て、同会社の昭和二六年四月一日から同二七年三月三一日に至る事業年度における課税所得金額は同会社振興鉱業所中租鉱区第一三四号(福採登第一六九八号鉱区に関する分は起訴されていない。)及び同会社丸吉鉱業所中第一坑第三坑(第二坑に関する分は起訴されていない。)につき、合計金二五八九万一〇〇〇円で、これに対し納付すべき法人税額は金一〇八七万四二二〇円であったにも拘らず、被告会社会計係長赤城潔等に命じ、同事業年度の所得につき二重帳簿を作成せしめ、その一つに虚偽の記載をなさしめるなどの方法により所得の一部を隠匿し、昭和二七年五月二九日右事業年度の課税所得金額は九五六万八〇〇〇円で納付すべき法人税額は四〇一万八五六〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を、所轄飯塚税務署長に提出し、もって不正の手段により前記納付すべき税額と右申告所得に対する税額との差額六八五万五六六〇円を逋脱したものである。
(当裁判所の一般的見解)
1. 申告期限後法定の時効期間を徒過し国の課税権従って被告会社の納税義務が消滅した部分に対し、所得額及び税額を増額した訴因変更は違法である旨の弁護人の主張につき、当裁判所は、右訴因変更は被告会社の昭和二六年度の所得につき同二七年五月二九日申告当時における数額を問題にしているのであり、その後の徴税手続の能否により左右されるものではないと確信するし、一件記録上訴訟手続に何らの瑕疵をも認め得ないので、右主張は採用しない。
2. 被告会社の事業は判示振興、丸吉両鉱業所において営まれ、会社経理の主体も右二ケ所であって会計帳簿の総体は両鉱業所において整備され、東京にある本社及び福岡にある出張所は右両鉱業所から必要な資金の送付を受けその使途を鉱業所に報告していた程度であり、その諸経費も鉱業所の会計帳簿に記帳されていた。
(証拠は次段)
3. 振興鉱業所では当所租鉱区第一三四号で採炭され次いでその坑道を延長して福採登第一六八九号鉱区(所謂る椿坑)でも採炭されるに至ったが(証拠は次段)、本件脱税事件の訴訟は前者のみを課税坑として対象にしており、後者は免税手続はしてなかったけれども免税坑の実体を具備していたものとして(脱税事件として捜査後東京国税局にて免税鉱と認定されている)、同坑区からの出炭による所得は起訴状における課税所得中から除外されていることが検察官の主張自体並びに審理の経過に照らし明らかであり、又丸吉鉱業所では、第一坑、第二坑及び第三坑において採炭されていたところ、第二坑が前同様免税鉱の実体を具備するものと看做され本件訴訟の範囲から除かれていることは明らかであるが、第三坑は弁護人主張の如く起業中の段階にあることは認め得るけれども、同所からの出炭による収益も又被告会社の所得を構成していることは明らかであるので、これが法人税法上の免税所得であることが立証されていない以上課税の対象となることは当然である。
4. 被告会社は免税の申請手続をしないのみか、会社の経理においても課税、免税の区別を截然とせず、会計帳簿上は振興及び丸吉両鉱業所毎に課税坑分も免税坑分も一体として記帳されているので、右両鉱業所のそれぞれの総所得から起訴の対象とされている各課税坑分の所得を算出認定せねばならぬ。
5. 一事業体の所得中に課税、免税の両所得が包含されている場合、その区分はできるだけ事実に合致せねばならず、その算出方法として弁護人が援用する国税局通達は、もともと事業体が課税、免税を区分して記帳する際の基準を示したものであるが、本件の如き両者の区分が明瞭にされていない場合の区分にも準用すべきものと思料するところ、第一に記帳の内容上明らかに課税坑又は免税坑に所属することが明らかであることを認め得る証左はなく、第二に右判断しない分又は両者に共通するものと思料される分を右通達に示す基準に従って区分せんとしても、弁護人主張のように、これを損益の各項目につきそれぞれその性質内容上適当と認められる別異の基準により個別的に算出した上これを合算する方法は、その基準として挙示する各坑の炭層状況、石炭産出の歩溜り率、カロリーの程度、出炭函数、設備機械の配置の精租、採堀条件の良否、従業員数、使用電力量の多寡、鉱害発生の場所等、いずれもその区別が明確であれば適切な基準とも言えるが、右基準のうち出炭函数については一部これを判明し得るけれども、その他の基準についてはこれらの各坑への所属関係及びその数量比率は殆んど何らの確たる帳簿上の記載を認めることはできず、単に数年を閲した後に一部の者が証言するところか、又は何時如何なる際如何なる責任ある地位の者が作成したか判明しない図面か、或いは被告会社が所轄官庁に報告したことを証明するのみでそれが事実であるか否かについては未だ確たる証明のなされていない証明書類等によって推計し、或いは更にこれを他の部分にまで類推して割出した数値に過ぎないものであって、一部の項目についてのみ判明する基準により算出するものとしても他の大部分の項目についてはそれぞれ右のような類推的な数値で算出した数額を合算することは、反って全体としてバランスを欠き真の数額から遠ざかるものと思料されるので採用に値せず、それよりはそれぞれの諸条件が異なりつつも最終的にはこれら諸条件の綜合的な結果としてあらわれているものと云うべき出炭屯数を各項目全てを通ずる一貫した基準として採用し、これの比率により区分することが本件の場合最も合理的で妥当な結果を得られるものと考える。
6. 従って被告人乃至弁護人の主張中、課税坑、免税坑の各所得の区分に関するものと思料される主張は全て前段階にのべた当裁判所の見解により判断されたものと云うべく、爾余の主張及び検察官の主張に対しては証拠の標目欄記載分のみを同所掲記の証拠により認定した他はこれを認めることはできないものとして全て採用せず、尚各主張額と異る認定をした分は、これを認め得る証拠を措信し、主張の数額に添う証拠はこれを採用しなかったものであり、取りたてゝ説明判断を示さない。
7. 振興、丸吉両鉱業所の各所得を認定するに際し、期末貯炭、石炭原価中の経費に含まれる固定資産減価償却費、東京本社関係経費の按分比率、課税坑、免税坑の所得按分比率等の計算上、両鉱業所別及びその各坑別の出炭屯数が前提となるものであるから、その証拠を各鉱業所の所得認定の証拠に先立ち掲記することとする。
8. 証拠の標目記載の方法を簡略にするため、最初に記載された時に各証拠に丸印付番号を付して該証拠を示す固有の番号とし、その後数次に亘り、証拠として掲載する場合は右丸印付番号のみを記載することとする。
(証拠の標目)
第一、(一)被告会社の組織、目的、代表者、事業所関係及び被告人田中隆博の地位につき
一、<1>振興鉱業開発株式会社の昭和二八年六月二九日付、同三八年一〇月一一日付、同四一年一二月二〇日付各登記簿謄本
一、<2>被告人田中隆博の昭和三〇年五月九日付検察官に対する供述調書
一、<3>福島太郎の昭和三〇年四月三〇日付検察官に対する供述調書
一、<4>第二〇回公判調書中証人下坂卯一の供述記載
(二)前示被告会社の経理の実態、帳簿の状況、両鉱業所内各坑の存在その採掘並びに課税関係につき
一、前掲<3><4>
一、<5>証人西本健吉に対する証人尋問調書
一、<6>塩出寅已の検察官に対する供述調書
一、<7>筒丸米蔵の検察官に対する供述調書
一、<8>城彰臣の検察官に対する供述調書
一、<9>山本勲の検察官に対する供述調書
一、<10>亀谷実雄の検察官に対する供述調書
一、<11>花野開志の検察官に対する供述調書
第二、法人税逋脱の謀議並びに逋脱の方法について
一、<12>第一八回公判調書中証人福島太郎の供述調書
一、前掲<3>
一、<13>第一八回公判調書中証人赤城潔の供述記載
一、<14>赤城潔の昭和三〇年四月二九日付検察官に対する供述調書
一、<15>押収してあるメモ書一枚(昭和三五年押第一八六号の四五)
第三、昭和二六年度被告会社課税所得金額について
(一)振興鉱業所の総出炭屯数及び同鉱業所各坑の出炭屯数につき
一、<16>押収してある「昭和二六上総勘定元帳」一冊(前同号の一)(前年度よりの繰越貯炭三六一屯、当期上半期末残高九二屯)
一、<17>同「昭和二六下総勘定元帳」一冊(前同号の二)(当期下半期末貯炭一八九屯)
一、<18>同「備忘録」一冊(前同号の二四)(当期販売屯数三万六六七五屯、当期産出屯数三万六五〇三屯)
一、<19>同「銘柄別出送炭実積表」一冊(前同号の二五)(出炭、送炭、山焚炭及び残高が別表一の通りであること)
一、<20>福島太郎の昭和三〇年五月一日付検察官に対する供述調書(<16><17>の成立につき)
一、<21>福島太郎の昭和三〇年六月一一日付検察官に対する供述書(<18>の成立につき)
一、前掲<14>(<16><17>の成立につき)
以上<16>乃至<21>及び前掲<14>の各証拠を綜合すれば振興鉱業所における昭和二六年度当期産出石炭屯数は、
(イ)当期販売屯数 三万六六七五屯
(ロ)期末貯炭(昭和二七年三月末) 一八九屯
(ハ)前年度よりの繰越貯炭 三六一屯
で、(イ)+(ロ)-(ハ)=三万六五〇三屯であると認められる。
一、<22>同「検炭台帳」一冊(前同号の三二)
一、<23>同「検炭台帳」一冊(前同号の三三)
一、<24>福岡国税局査察課昭和二七年度査察第一一号振興鉱業開発株式会社「弁解上申書(免税関係)」と題する書類綴一冊中、昭和二八年七月二二日付同会社代表取締役今村長太郎より福岡国税局長に宛てた、「振興炭坑新坑開発区域よりの出炭高調書並びにその証憑書類提出の件」と題する書面添付の「昭和二五、二六年度新坑開発箇所よりの出炭高」と題する一覧表
一、<25>久富辰市の昭和三〇年五月九日付検察官に対する供述調書(<22><23><24>の各成立につき)
右<22>乃至<25>の証拠によれば、振興鉱業所各坑における出炭量を検炭野取-即ち坑口において運び出される出炭量を各坑別に検量した段階-の数量として捕捉すれば、租鉱区第一三四号における出炭量は四六九一屯、福採登一六九八号鉱区におけるそれは三万二〇四〇屯であることが認められる。
前認当期総産出石炭屯数三万六五〇三屯を右検炭野取段階における出炭量の比率で按分すれば振興鉱業所各坑別の出炭屯数は
(イ)租坑区第一三四号が 四六六二屯
(ロ)福採登一六九八号鉱区が 三万一八四一屯
である。
(二)丸吉鉱業所の総出炭屯数及び同鉱業所各坑の出炭屯数につき
一、<26>押収してある「送炭明細簿」一冊(前同号の六)
一、<27>同「炭代前受金補助簿」一冊(前同号の五九)
一、<28>同「収支伝標」(前同号の二七)中三冊(昭和二六年一〇月分、同年一一月分、同二七年三月分)
右<26>乃至<28>によれば、
販売先別売上として合計 三万二九二七屯
田川特売(販売分)として合計 一六四屯
同(自家消費分)として合計 一八三屯
記帳以外販売分(永田製作所及び辛島石炭)として合計 一六四屯
自家消費炭として合計 二二屯
以上当期販売屯数として合計 三万三四六〇屯
を認めることができる。
一、<29>同「貨車ノート帳」一冊(前同号の五八)
一、<30>同「検炭野取表」一冊(前同号の三九)
右<29>により昭和二七年三月三一日に貨車積込一六二屯、同年四月一日に同じく一七三屯を認め得るところ、<30>によれば右四月一日は稼動採炭していないことが明らかであるので、四月一日積出の一七三屯は同年三月末日に貯炭として残在していたものと断ずるに十分である。
一、<31>福岡通商産業局長の昭和三五年六月八日付証明書一通(35福通統証第九四三号)
によれば昭和二六年四月初の貯炭量が五一八屯と報告されていることが認められ、他にこれを左右するに足りる証拠はない。
以上により丸吉鉱業所における昭和二六年度当期産出石炭屯数は
(イ)当初販売屯数 三万三四六〇屯
(ロ)期末貯炭(昭和二七年三月末) 一七三屯
(ハ)前年度よりの繰越貯炭 五一八屯
で、(イ)+(ロ)-(ハ)=三万三一一五屯であると認められる。
一、<32>同「日別出炭予定実積表」一冊(前同号の三四)
一、<33>同「検炭野取表綴」一冊(前同号の三七)
一、前掲<18>
右<32><33>及び前掲<18>の各証拠によれば、昭和二六年度の丸吉鉱業所各坑における出炭量を前記振興鉱業所と同様検炭野取の段階で捕捉すれば月別の出炭量は別表二のとおりであり、各坑別に集計すれば第一坑が二万〇九〇七屯第二坑が七六七〇屯、第三坑が一四一屯であることが認められる。
前認当期総産出屯数三万三一一五屯を、右検炭野取段階における出炭量の比率で按分すれば丸吉鉱業所各坑別の出炭屯数は
イ第一坑 二万四一〇八屯
ロ第二坑 八八四四屯
ハ第三坑 一六三屯
である。
(三)振興鉱業所(所謂る振興炭鉱)関係の損益計算が別表三のとおりであること。
(1)販売収入が二億一八二七万六八七二円であること。
一、前掲<16><17><27><20><14>
一、<34>押収してある「月別送炭分炭代調」一冊(前同号の五)
一、<35>同「昭和二六上石炭原価内訳配給所受払」一冊(前同号の三)
一、<36>同「昭和二六下仮勘定簿」一冊(前同号の四)
一、<37>同「決算書類」一綴(前同号の七)中損益計算書
一、<38>福島太郎の昭和三〇年四月二九日付上申書添付の損益計算書及び売上明細表
一、<39>下河内邦彦の昭和三〇年六月一三日付検察官に対する供述調書
一、<40>田中誠治に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<41>川島安治に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<42>山形作次郎に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<43>山本茂樹に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<44>樋口英彦に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<45>貞末博之に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<46>大庭宗市に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<47>熊野恭平に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<48>藤井峰保に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<49>大森忠男に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<50>川久保匡士に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<51>井上勇に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、<52>山形作次郎の検察官に対する供述調書
一、<53>樋口英彦の検察官に対する供述調書
一、<54>椛田隆義の検察官に対する供述調書
右証拠<16>によれば昭和二六年度上半期末の販売収入が八六〇七万二九九四円、<17><37>によれば同年度下半期末のそれが一憶三二二〇万三八七八円であることが明記されており、その合計二億一八二七万六八七二円が総販売収入となる。
右証拠<34>によれば月別送炭販売収入が、<35><36>によれば自家消費炭代が、<16><27>によれば値引その他修正すべき額がそれぞれ別表四のとおりがあることが認められる。
(2)期末貯炭が五一万五七三一円九七銭であること。
一、前掲<17><37><38><14>及び後掲石炭原価関係の証拠
右公表帳簿<17>面上の記載によれば計上額は五二万七三一〇円となっており、<38>により福島太郎が<14>により赤城潔が右額を期末貯炭額として上申書又は損益計算書に掲載しているが右額は被告会社が認めていた石炭原価及び当期産出石炭屯数を基礎として計算されたものと考えられるところ、当裁判所は前記第三(一)記載のとおり、昭和二七年三月末日の期末貯炭量を一八九屯、当期産出屯数を三万六五〇三屯と認定し、後記(5)記載のとおり総石炭原価を九九六〇万七二一八円七三銭と認定するのであるから、棚卸し資産として翌年度に繰越すべき期末貯炭の評価は右総石炭原価を当期産出屯数で除した一屯当りの石炭価額に期末貯炭量を乗じて得た価額五一万五七三一円九七銭をもって正当と考える。
(3)営業外収入が五万六五六七円九〇銭であること。
一、<55>福岡銀行飯塚支店の証明書(銀行関係書類福岡の部一中見出14のもの)
一、<56>同銀行の証明書(同右中見出15のもの)
一、<57>同銀行の証明書(同右中見出13のもの)
一、<58>協和銀行飯塚支店の証明書(銀行関係書類福岡の部二中見出13のもの)
一、<59>同銀行の証明書(同右中見出14のもの)
一、<60>証人長野正勝の当公判廷における供述(右<55>乃至<59>の成立に関し)
一、<61>押収してある「備忘録」一冊(前同号の八)
以上の各証拠により銀行預金の利息、電力料金過払分戻り雑収入、及び北九州石炭株式会社配当金の合計五万六五六七円九〇銭を認め得る。
(4) 繰越貯炭が一一一万六、七六〇円七二銭であること。
一、<62>押収してある昭和二五下総勘定元帳」一册(前同号の九)
一、前掲<16><17><37>
一、前掲<14>添付の振興炭坑損益計算書
(5) 石炭原価が九、九六〇万七、二一八円七三銭であること。
一、前掲<17><16><37><35><36>
右証拠<16><17>及び<37>によれば被告会社帳簿上の記載が別表五(石炭原価内訳明細表)1のとおりであり、右証拠<35><36>によれば同表2のとおりの科目種類別内訳となることが認められるところ
(イ)一、前掲<20>
一、前掲<38>中不当計上原価表(貯蔵品の架空仕入減をなし石炭原価に計上したものの明細)
一、<63>押収してある「昭和二六上下買掛金(内訳)」と題する帳簿一册(前同号の一〇)により認められる、太田商会、振興工作への支払合計二九万〇、一三三円四〇銭
(ロ)一、前掲<20><38>
一、<65>押収してある「木材額受払帳」一册(前同号の一一)
一、<66>同「送状綴」一册(前同号の一二)
一、<67>同「金属類受払帳」一册(前同号の一三)
一、同同「金属類受払帳」一册(前同号の一四)
一、<68>同「電気用品受払帳」一册(前同号の一五)
により認められる、振興飛島に送付した貯蔵品代七万一、八八一円一九銭
(ハ)一、前掲<20><38><64><65><66><67><68>
一、<69>押収してある「事務用品受払帳」一册(前同号の一六)
一、<70>同「金属類受払帳」一册(前同号の一七)
一、<71>同「ゴム製品、油類受払帳」一册(前同号の一八)
一、<72>同「工具、器具、備品受払帳」一册(前同号の一九)
一、<73>同「セメントその他受払帳」一册(前同号の二〇)
により認められる、丸吉鉱業所への貯蔵品送付分合計一八八万一、九八四円六一銭
右(イ)乃至(ハ)は物品費中石炭原価として不当であるから、右合計二二四万三、九四九円二〇銭はこれを減額すべく
(ニ)一、前掲<17>
一、<74>押収してある「雑書類」一綴(前同号の二六)中各月貯蔵品受払表の昭和二七年四月分の前月繰越高
一、<75>同「実施棚卸表」一綴(前同号の七〇)
により認められる、右<17>と<74>及び<75>の合計額との差額四、四二六円は貯蔵品の石炭原価振替洩れと解し加算すべきものであり、
(ホ)一、前掲<16><17><35><36>
一、<76>押収されている「確定申告書」一通(前同号の七二)により認められる、退職給与引当金七三万〇、〇六〇円は当時昭和二七年二月二日施行の政令第一二号により従前許されていなかった退職給与引当金の損費計上が許されることになっているが、それにはその為の申告手続を要することになっており、右<76>に徴するもこの申告がなされた形跡は窺われないので前記引当金計上は矢張り不当という外ないが、現実に支出した分として合計一五万五、五〇〇円を認め得るのでこれを控除した残額五七万四、五六〇円は労務費中不当計上として減額すべく
(ヘ)一、前掲<38>中支払修繕料その一
一、前掲<20><36>
一、<77>第三〇回公判調書中証人青木廉の供述記載
により認められる、飯塚電気への昭和二六年一〇月三一日付支払分電動機修理代二万〇、二〇〇円
(ト)一、前掲<35><36><16><17><20><38>
により認められる、鉱害補償引当金計上額合計三六五万〇、三〇〇円中現実に支出した分合計二四八万六、六二五円七五銭を控除した残額一一六万三、六七四円二五銭
(チ)一、<78>押収してある「昭和二六年度上、貯蔵品、建設仮勘定、未決算、利子」と題する仮勘定簿一册(前同号の二一)
一、<79>昭和二五年度更正決定決議書(昭和三〇年七月二日付飯塚税務署長作成の査察事件処理済報告と題する書類に編綴)添付の所得金額計算表)
により認められる、前期損金認容分を再度当期損金として振替処理した社長外職員給料出張旅費等合計一一万七、二〇〇円
右(ヘ)乃至(チ)はいずれも経費中不当計上として減額さるべく、
(リ)一、前掲<36>
により認められる、社長外職員の旅費、給料及び専用線補修費等合計一三万九、一〇六円九三銭
(ヌ)一、前掲<78>一頁、<36>一〇頁
一、<80>協和銀行飯塚支店の証明書(銀行調査書類福岡の部二中見出10のもの)
により認められる、昭和二五年度法人税更正額二八二万一、一〇〇円に対する延滞期間二九五日分の、同増減額(調査額六〇五万六、六四〇円と右更正額との差額)三二三万五、五四〇円に対する延滞期間三〇五日分のいずれも日歩四銭の割合による利子税合計七二万七、五四〇円
(ル)一、前掲<18><19>(別表六の1.2算出につき)
一、<81>押収してある「固定資産台帳」一册(前同号の六五)
一、前掲<79><18><67><38>
一、<82>飯塚税務署長の福岡国税局長に宛てた昭和二八年六月一六日付証明書添付別紙昭和二六年度確定申告書謄本
一、前掲<67>(別表六の3中構築物2乃至12につき)
により認められる、減価償却費不足分(計算関係は別表六)合計五二万二二四四円
右(リ)乃至(ル)はいずれも経費として石炭原価に加算さるべく、次に東京本社経費につき
みるに
(ヲ)一、前掲<35><36>
によれば、同経費振興鉱業所負担分として四三八万〇、三六一円が帳簿に記載されているが、
一、<83>西沢良雄に対する昭和二八年一月二四日付、大蔵事務官の質問てん末書
一、<84>押収してある「経費明細帳」一册(前同号の二二)
一、<85>同「金銭出納帳」一册(前同号の二三)
によれば、東京本社における昭和二六年四月一日から同二七年三月三一日までの経費は四九二万一、八二八円五〇銭であることが明らかであるから、これを振興、丸吉両鉱業所における当期出炭屯数(前者が三万六、五〇三屯、後者が三万三、一一五屯)の比率で按分計算すれば、振興鉱業所からの送金分は二五八万〇、六七六円〇六銭となり、これと前記計上額との差額一七九万九、六八三円九四銭は不当な計上として減価すべきである。
(ワ)ところで、振興、丸吉両鉱業所から東京に送金された金額等は右所謂る東京本社費にとどまらず多額に上っていることが窺われるのでその損益計算上の所属をみるに
一、<86>銀行調査書類「東京の部」一、二
一、前掲<60>(右書類の成立の真正につき)
一、<87>西沢良雄に対する昭和二八年一月二七日付大蔵事務官の質問てん末書
一、<88>西沢良雄に対する昭和二八年一月二七日付大蔵事務官の質問てん末書
一、<89>右同人に対する同年三月二日付大蔵事務官の質問てん末書
によれば、東京における受入金額は
(1)振興、丸吉両鉱業所よりの送金額 五、七三四万〇、〇〇〇円
(2)東京における銀行借入金 六七五万七、七三〇円
(3)東京における銀行預金の雑入金 一三一万六、四四五円
(4)東京における昭和二六年三月末の預金残高即ち繰越金 五、八〇六円五三銭
で合計六、五四一万九、九八一円五三銭であり、
右金額中
(1)昭和二七年三月末の預金残が一〇一万九、二五〇円で使用されておらず、使用された分としては
(2)被告会社東京本社経費として前認のとおり
四九二万一、八二八円五〇銭
(3)株式会社国際家蓄研究所資金として
三、五二四万二、五六三円五〇銭
(4)築地ホテル関係費用として 二〇万〇、〇〇〇円
(5)振興会田中政治事務所関係費用として
一三一万七、六〇三円
(6)被告会社の経費として使用されていないことが確実に認められるもの
五六三万九、六三三円
(7)政治資金関係に使用されたと認められるもの
四三二万一、〇八二円
を認め得るところ、右(1)乃至(7)の使途の明確な分合計五、二六六万一、九六〇円を控除した残余一、二七五万八、〇二一円五三銭は、その使途が不明なため被告会社の経費と認むべきものがあるやも知れず確証を得ないので被告会社の利益に確し同会社の経費として認容することとし、これを振興、丸吉両鉱業所の前認出炭屯数の比率で按分すれば、振興鉱業所負担分は六六八万九、四四八円九九銭となるから、これを同鉱業所の石炭原価として加算することとする。
(カ)一、前掲<16><36>
一、<91>福岡銀行飯塚支店の証明書(銀行関係調査書類福岡の部その一中見出17、11のもの)
一、<90>押収してある「小切手帳控」一冊(前同号の六八の二一中見出2のもの)
により認められる、昭和二六年八月三〇日引出の四〇万円中二〇万円は借入金の返済に充当されているので支払利子勘定から減額すべきものである。
以上帳簿上記載されている石炭原価
九、七六四万三、七二〇円二〇銭
から物品費、労務費、経費、本社費、支払利子中
合計 六一一万九、二七六円三九銭を減額し
物品費、経費、本社費として
合計 八〇八万二、七六五円九二銭を加算
すれば差引九、九六〇万七、二一八円七三銭が真正の石炭原価となる。
(6) 販売費が一、〇四二万三、二七〇円であること
一、前掲<16><17><37>
(四) 丸吉鉱業所(所謂る丸吉炭坑)関係の損益計算が別表七のとおりであること
(1) 販売収入が一億八、七六一万二、六二三円八一銭であること
一、前掲<26><27><14>
一、<92>前掲<28>中七册(昭和二六年九月分、同年一〇月分、同年一一月分、同年一二月分、同二七年一月分、同年二月分、同年三月分)
一、<93>前掲<28>のうち昭和二六年九月分収支伝票綴一册中一〇五枚目の収支日報と題する書面の日査表の記載(上半期の販売収入)
一、<94>前掲<74>中昭和二七年三月三一日現在丸吉貸借対照表
一、<95>下河内邦彦の昭和三〇年五月三日付検察官に対する供述調書(<94>の成立につき)
(2)期末貯炭が八四万四、六七六円八七銭であること
一、前掲<26>乃至<31>及び後掲石炭原価関係の証拠
右<26>乃至<31>の証拠により丸吉鉱業所における昭和二六年度当期産出屯数が三万三、一一五屯、期末貯炭が一七三屯であることは前掲第三(二)のとおりであり、同鉱総石炭原価は後記5のとおり一億六、一六八万四、八四二円一九銭と認定するので、前記振興鉱業所期末貯炭価額算出と同様な方法により計算すれば、丸吉鉱業所期末貯炭額は八四万四、六七六円八七銭となる。
(3) 営業外収入が四万八、六一七円二九銭であること
一、前掲<93><94><95><14><20>
一、<96>前掲< >のうち昭和二六年九月分収支伝票綴一册中一二七枚目の書類
一、<97>同収支伝票綴中一四〇枚目の振替伝票
(4) 繰越貯炭が一八一万八、二九九円四三銭であること
一、前掲<93><14>
(5) 石炭原価が一億六、一六八万四、八二四円一九銭であること
一、前掲<93><94><14><20><95><96>
右<93><96><14>によれば、丸吉鉱業所石炭原価が当期上半期において五、二九四万〇、四三二円として、<94><14><20><95>によれば、同下半期において一億〇、〇六五万五、四九七円六一銭として記載されており、被告会社帳簿上の公表金額が右合計一億五、三五九万五、九二九円六一銭であることが認められるところ、
(イ)一、<98>前掲<28>のうち昭和二六年八月分収支伝票綴一册中同年同月二日付出金伝票(見出1)
により、本宅分左官材料代金他として一万三、四三六円
(ロ)一、右同書中同年同月一〇日付出金伝票(見出2)
により、昭和二六年七月本宅稼働資金として四、八五七円
(ハ)一、<100>右同書中同年同月二〇日付出金伝票(見出3)
一、<101>同書中株式会社福岡銀行伊田支店の領収書(見出4)
により、田中ヒデ子宛送金手数料として五〇〇円
(ニ)一、<102>右同書中同年同月三〇日付出金伝票(見出5の1)
一、<103>同書中、同年同月三〇日付有限会社平野ラジオ電気商会の領収書(見出5の2)
一、<104>同書中同年同月三〇日付右商会の請求書(見出5の3)
により、小型ラジオ及びアイロン修理代として一万六、〇〇〇円
(請求書及び領収証には一万六、一〇〇円と記載されているが出金伝票記載の一万六、〇〇〇円を採用する。)
(ホ)一、<105>前掲<28>のうち昭和二六年一〇月分収支伝票綴一册中同年同月二七日付出金伝票(見出4)
一、<106>右同書中同年同月二〇日付島津呉服店の領収書(見出5)
により、女物紋付一式仕立代として三万〇、〇〇〇円
(ヘ)一、<107>右同書中同年同月二四日付出金伝票(見出6の1)
一、<108>同書中同年同月二〇付島津呉服店の領収書(見出6の2)
により、出金伝票にはウエス外消耗品代とあるが、田中個人の呉服品購入代と認むべき二万〇、〇〇〇円
(ト)一、<109>前掲<28>のうち昭和二六年一二月分収支伝票綴一册中、同年同月一七日付出金伝票
(見出2の1)
一、<110>右同書中、坂口策好作成の本宅人夫稼働賃金総括表と題する書面(見出2の2)
により、出金伝票には国武外出張旅費とあるが本宅の人夫稼働賃金と認められる
二万〇、二二六円
(チ)一、<111>右同書中、同年同月一九日付出金伝票(見出3の1)
一、<112>同書中昭和二六年一一月分本宅雑給と題する書面(見出3の2)
により、出金伝票には旅費及び講習材料代とあるが、本宅のための費用と認められる四万一、一八五円
(リ)一、<113>前掲<28>のうち、昭和二七年一月分収支伝票綴一册中、同二六年一二月一四日付出金伝票
(見出1)
により、右伝票には旅費及講習材料代とあるが、その費目名義及び金額から前項同様と認むべき四万一、一八五円
(ヌ)一、<114>右同書中昭和二七年一月二四日付出金伝票(見出5)
により、恵子、勝吉学校入学式金三万〇、〇〇〇円
(ル)一、<115>右同書中、同年同月二九日付出金伝票(見出9)
により、社長宅火鉢代金三、五〇〇円
(ヲ)一、<116>前掲<28>のうち昭和二七年二月分収支伝票綴一冊中、同年同月一一日付出金伝票(見出1)
により、振興物産看板代 二〇〇円
(ワ)一、<117>前掲<28>のうち昭和二七年三月分収支伝票綴一冊中、同年同月一日付坂口策好作成の本宅人夫稼働資金総括表と題する書面(見出1)
により、本宅人夫稼働賃二名分合計 四二二〇円
(カ)一、<118>右同書中、同年四月一八日付出金伝票(見出2)
一、<119>同書中同年同月一七日付坂口策好作成の本宅人夫稼働賃金総括表と題する書面(見出3)
により、出金伝票には自見外一名旅費とあるがその実は本宅における人夫稼働賃金と認められる四七〇〇円
以上(イ)乃至(カ)合計二三万〇〇〇九円は被告会社と関係のない会長田中彰治の家族の生計費、社長田中隆博の家族の生計費又は他会社の費用を石炭原価に計上したもので不当であるから減額すべく
(ヨ)一、<120>前掲<28>のうち昭和二七年一月分収支伝票綴一冊中同年同月二三日付出金伝票(見出4)
一、前掲<14>
により認められる、福岡無尽株式会社に対する支払金一万五〇〇〇円は被告会社と関係のない支出を石炭原価として計上した不当のものとして減額すべく
(タ)一、<121>押収してある「商社別買掛金帳」一冊(前同号の二八)
一、<122>熊本県坑木協同組合平島初枝作成の帳簿写
により認められる、坑木買掛金二〇万五七七七円二六銭は二重に仕入れ記帳がなされている水増し架空のものとして減額さるべく
(レ)一、前掲<121>
一、<123>中津留幸雄の昭和三〇年四月一日付検察官に対する供述調書
により認められる、株式会社多賀製作所よりフランジ購入代金四四万九〇〇〇円は、後日昭和二七年三月三一日に値引代金三八万二八〇〇円として整理されているので二重記帳ということになり不当として減額さるべく
(ソ)一、前掲<121>
一、<124>大蔵事務官長野正勝作成の調査事績報告書
により認められる、仕入先西米炭鉱物資株式会社よりの貯蔵品(資材)仕入代金一五〇万七〇三〇円八三銭は架空仕入先よりの架空仕入記帳分として減額さるべく
(ツ)一、前掲<94>
一、<125>押収してある「昭和二五下総勘定元帳」一冊(前同号の二九)
により認められる鉱害補償引当金三七〇万一三九三円五八銭は、引当金の計上は当時の税法上認められないので、前年度末における同引当金計上額二六四万一三六〇円四〇銭を控除した一〇六万〇〇三三円一八銭が当期における不当な損費計上分として減額さるべく
(ネ)一、前掲<94><125><76>
により認められる、退職給与引当金三〇万七八九四円〇二銭は、前記振興鉱業所関係で説明のとおり矢張り不当というほかはないが、前年度末における同計上額が五九万四三二二円九八銭であるから、その差額二八万六四二八円九六銭は当期中に退職給与として支出されたものと認め得るところ、これが石炭原価として計上されていないので、これを加算すべきものである。
(ナ)一、前掲<94>
一、<126>押収してある「昭和二七年三月末棚卸表」一冊(前同号の三〇)
により認められる、会計帳簿の決算の表示が実地棚卸表の合計金額一七〇八万九二九六円よりも資産として多額に記載されている(二三二一万三九四八円三五銭)貯蔵品につき右差額六一二万四六五二円一八銭は石炭原価として消費されたものの振替洩れと認め損金に加算すべく
(ラ)一、前掲<20><38><64>乃至<73>
により、前記振興鉱業所石炭原価の計算に際し丸吉鉱業所への貯蔵品送付分として減額したもの一八八万一九八四円六一銭は、丸吉鉱業所において本支店勘定としての記帳も、その後丸吉において如何に使用されたかも不明であるが、被告会社の利益に解し、石炭原価として消費されたものと認め、石炭原価に加算することとする。
(ム)一、<127>押収してある「施業案綴」一冊(前同号の四九)中昭和二五年六月一日付通産局へ提出のもの(見出1)
一、前掲<32><30>
(以上は、別表八の12算出につき)
一、<128>押収してある「固定資産明細帳」一冊(前同号の六六)
一、<129>同「資産帳簿」一冊(前同号の七三)
一、<130>同「総勘定元帳」一冊(前同号の五七)
一、<131>同「振替伝票」一冊(前同号の五五)
一、前掲<74><125><79><28>
により認められる減価償却費超過分(計算関係は別表九)合計一六三万〇九〇八円は不当計上として減額すべく
(ウ)一、前掲<93>
一、前掲<28>のうち昭和二六年八月分収支伝票綴一冊中同年同月三一日付振替伝票(見出6)
によれば、昭和二六年八月分の山元消費炭合計二〇屯分の価格七万八五八二円一二銭は同年九月末上半期の石炭原価中に含まれていないことが明らかであるから、これを加算する。
(ヰ)一、<132>押収してある「本社関係と表示のある文書綴」(前同号の七一)中、昭和二六年四月分振興田川鉱業所生産原価と題する書面(見出1のもの)
によれば本社費は一屯当り一二〇円で計算されていることが認められ、被告会社が丸吉鉱業所の当期産出屯数と考えている数量は
一、<133>昭和三五年六月六日付被告会社より福岡通商産業局長に宛てた「元振興田川炭鉱の月初貯炭、出炭、山元消費送炭、月末貯炭の証明願」に対する同局長の同年六月八日付証明書(昭和二六年四月分につき)
一、<134>同年五月三一日付右同様の証明願に対する同局長の同年六月二日付証明書(昭和二六年五月より同二七年三月までの分につき)
によれば、合計二万九九五六屯であるから、これを前期屯当価格一二〇円に乗ずれば、丸吉鉱業所が東京本社費負担額と計上するところは三五九万四七二〇円であるが、前記振興鉱業所関係損益計算(三)(5)(ワ)において認めたように真正の本社費は四九二万一八二八円五〇銭であるから、これを前記振興、丸吉両鉱業所における当期出炭屯数の比率で按分計算すれば丸吉鉱業所からの送金分は二三四万一一五二円四四銭となり、これと前記計上額との差額一二五万三五六七円五六銭は不当な計上として減額すべきである。
(ノ)ところで、前記振興鉱業所関係損益計算(三)(5)(ワ)において認めた東京経費中、使途不明分を被告会社の経費として認容した一二七五万八〇二一円五三銭を前同様按分計算した丸吉鉱業所の負担分六〇六万八五七二円五四銭は、丸吉鉱業所の石炭原価に加算することとする。
以上帳簿上記載されている石炭原価
一億五三五九万五九二九円六一銭
から(イ)乃至(ツ)及び(ム)(ヰ)
合計六三五万一三二五円八三銭を減額し
(ネ)(ナ)(ラ)(ウ)(ノ)
合計一四四四万〇二二〇円四一銭を加算すれば差引一億六一六八万四八二四円一九銭が真正の石炭原価となる。
(6)販売費が八〇〇万二七九七円であること。
一、前掲<93><94><20><14><95>
(7)営業外支出が四四万一九八六円であること。
一、前掲<93><96>
一、前掲<28>のうち、昭和二六年九月分収支伝票綴一冊中見出2の6のもの
一、前掲<14>添付の丸吉炭坑損益計算書
(五)被告会社の本件課税所得(振興鉱業所租鉱区第一三四号及び丸吉鉱業所第一、第三坑分)及びこれに対する法人税額の計算
(1)振興鉱業所の所得金額一億〇七七〇万一九二二円四二銭を、同鉱業所の(イ)租鉱区第一三四号と(ロ)福採登第一六九八号区とに前認定の右各鉱区の当期出炭屯数の比率で按分計算すれば
(イ)租鉱区第一三四号 一三七五万五二〇八円一二銭
(ロ)福採登第一六九八号区 九三九四万六七一四円三〇銭
(2)丸吉鉱業所の所得金額一六五五万八〇一一円三五銭から同鉱業所の(イ)第三坑(起業中)の出炭一六三屯分の所得を控除した残額を(ロ)第一坑と(ハ)第二坑とに前認定の右第一、二坑の当期出炭屯数の比率で按分計算すれば
(イ)第三坑 八万一五〇二円五二銭
残額 一六四七万六五〇八円八三銭
(ロ)第一坑 一二〇五万四三七二円二七銭
(ハ)第二坑 四四二万二一三六円五六銭
(3)従って、振興鉱業所租鉱区第一三四号の所得
一三七五万五二〇八円一二銭
丸吉鉱業所第一坑、第三坑の所得合計
一二一三万五八七四円七九銭
右両者の合計は二五八九万一〇八二円九一銭となるので端数計算に関する法律に従い百円未満の端数を切捨てれば二五八九万一〇〇〇円が本計課税所得ということになり、これに対する昭和二六年度の法人税額は税率百分の四二を乗じた一〇八七万四二二〇円となる。
(六)被告人田中隆博が虚偽の法人税確定申告をしたことにつき
一、押収してある「昭和二六年度確定申告書」一通(前同号の七二)
右によれば被告会社の右年度所得額は
九五六万八〇〇〇円
右所得に対する法人税額は
四〇一万八五六〇円と記載して届出られていることが明らかであり、よって、前項認定の真正課税所得及びこれに対する法人税額との差額則ちほ脱にかかる所得額は一六三二万三〇〇〇円税額は六八五万五六六〇円となる。
(法律の適用)
被告人田中隆博の判示行為は、昭和四〇年三月三一日法律第三四号附則第一九条、昭和三七年三月三一日法律第四五号附則第一一項、昭和三二年三月三一日法律第二八号附則第一六項、昭和二九年三月三一日法律第三八号附則第九項により改正される以前の法人税法第四八条第一項第一八条第一項罰金等臨時措置法第二条に、被告会社は右各法条の他右法人税法第五一条に各該当するところ、本件犯情につき考えるに、本件は正規の所得に対して脱税所得の占める割合が大きく当時としては相当巨額な脱税行為であったこと、会計課員を集めこれに指示して帳簿の改ざん、所得の秘匿を策するなど逋脱方法が悪質であること、平素から収益の大部分を東京に送金して而もその使途を明確にせず、会社経理の実態を曖昧にしていること、今日に至るまで未だに逋脱税額を納付していないこと、など悪い情状もあるが、実権を会長たる父に握られ殆んどそのいうままに動いている気配の窺われること、本件により既に会社は閉山整理し存在の実態が失われていること、などの諸般の事情を考慮し、被告会社に対しては所定罰金額の範囲内、被告人田中隆博に対しては懲役刑及び罰金刑を併科することとしその刑期及び金額の範囲内で、夫々主文第一項掲記の刑に処し、被告人田中隆博に対しては刑法第二五条第一項に則り本裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、同被告人において右罰金を完納しないときは同法第一八条に則り金一万〇〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置すべく、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条を適用して全部被告会社と被告人田中隆博との連帯負担と定め、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 安仁屋賢精 裁判官 大西浅雄 裁判官 東孝行)
別表1. 振興鉱業所昭和26年度当期産出鉱量明細表
<省略>
別表2. 丸吉鉱業所の各坑別出炭区分
<省略>
別表3. 振興鉱業所 損益計算表
自昭和26年4月1日
至〃27年3月31日
<省略>
別表4. 振興鉱業所販売収入明細表
<省略>
別表5. 振興鉱業所石炭原価内訳明細表
<省略>
別表6 振興鉱業所減価償却費算出関係諸表
1 昭和26年4月1日現在の経済的採掘可能炭量
昭和24年4月1日現在 324,930屯
自24.4.1 至25.3.31 出炭高 31,155屯
自25.4.1 至26.3.31 出炭高 35,362屯
差引26.4.1現在 可採炭量 258,413屯
2 昭和26年度月別出炭量及び固定資産の取得年月に対応する(1)経済的採掘可能炭量並びに(2)当期産出鉱量
(1)は昭和26年4月1日現在の可採炭量から当該取得年月の前月分迄の当期産出鉱量を控除し、(2)は当該取得年月以降昭和27年3月末迄の採掘量を合算して算出する。
<省略>
3 同上金額中より増減修正すべきもの(△は減額分)
<省略>
別表7. 丸吉鉱業所 損益計算表
自昭和26年4月1日
至同27年3月31日
<省略>
別表8. 丸吉鉱業所石炭原価内訳明細表
<省略>
別表9. 丸吉鉱業所 減価償却費算出関係諸表
<省略>